書籍レビュー

【書籍レビュー】ヤコヴ・ラブキン著「イスラエルとは何か」

「ホロコースト」によってパレスティナ侵略は許容されるか? ー国際社会から看過されている暴力と反伝統的なイデオロギー  二重の植民地主義に貫かれた「国家」の正当性を問う (帯より)

「イスラエル建国物語」(メイヤ・レヴィン著、ミルトス)であまりにも美しく描かれていたイスラエルの「再建」。

しかし現代のイスラエルは、外から見ていてもどうしてもユダヤ人の理想郷には見えません。

今日のイスラエル国には、これが聖書の神を信じる民族のすることか、と思えるような振る舞いが多く見られます。小国ながら屈指の軍事国家であり、パレスチナ人に対するアパルトヘイト的な所業や威嚇の数々をどう理解したらよいのか。

ポグロムやホロコーストを経験し、やっとの思いで手にしたユダヤ人自身の国を命がけで守ろうとする、それは理解できても、本当にそれでパレスチナに与えている苦しみを、過度の被害者意識だけで正当化できるのだろうか、何かが間違っているのではないだろうか、本書ではそんなモヤモヤとした気持ちに、ユダヤ教側から一定の視座を与えているように思います。

本書の目的は次のようなものです。

ユダヤ人、ユダヤ教徒とシオニストが混同され、ユダヤ教とシオニズムが見間違えられ、ユダヤ教の伝統と民族的なユダヤ人主義が同一視され、イスラエル国の利害と他の国々のユダヤ系住民の利害とが直結させられてしまう今日の状況下、一般の目にいかに逆説的に映ろうとも、本書においては、このユダヤ教の伝統がシオニズムに突きつけてきた拒否の姿勢に最大限の重要性を付与したいと思います。そのためにはまず、宗教、民族性、ナショナリズムの三者を厳密に区別しなければなりません。(p.18)

まず、イスラエル人すべてがパレスチナ対する暴力と抑圧を是認しているわけではないこと。

彼ら(ユダヤ教徒の反シオニスト)はまず、ユダヤ人、ユダヤ教徒の皆が皆シオニストであるわけではなく、その皆が皆、イスラエル国に自己を同一化したり、その国家がユダヤ人全員の名のもとに繰り広げている行動を容認しているわけではないということを全世界の目にはっきりと示したいと思っています。

ではそのシオニストとは何か。本書はその意味について論考しています。

シオニズムによって建国されたイスラエルは、正統的なユダヤ教徒たちの国ではない。古代イスラエルと今日のイスラエル国は別物である。(帯より)

この主題を、本書は冷静かつ分析的に論述しています。

シオニズムがイスラエル建国思想の中核であることは歴史の常識ですが、それが徹底的な非宗教化の営みであったという衝撃。

言語も、「イスラエルの地」そのものも、ユダヤ教の伝統に連なる人間としての意識を高めることには寄与せず、逆に一部の観察者が認めたように、「脱=ユダヤ教化」がこれほど徹底して進行した場所としてイスラエルをおいてほかにないといわれるまでになったのです。(p.123)

ユダヤ教的な見方でいえば、離散せられている状況とは、「どこかの物理的な場所から追放されてしまうことよりも、神との間に接点を見失ってしまうことを意味するもの(p.159)」であり、パレスチナの地に人為的に国家を作るなどということは、しかもそれが非宗教化したシオニズムによってであることは、許されないことだと言うのです。

トーラーとその戒律を打ち捨てた状態で<かの地>に住むことがいかに危険な業であるか(p.157)

とあるように、ユダヤ教の立場からは、シオニズムは嫌悪すべき所業であったのです。

また本書では、非宗教的シオニズムが近代のジェノサイド(ユダヤ人迫害)の結果として起こったものではなく、逆に「それが反ユダヤ主義の活性要因になっているのではないか(p.241)」という見方、そしてまた、「イスラエル国がユダヤ人ジェノサイドという強力なカードを濫用してきたのではないかと考える向きも出てきた(p.201)」ことを紹介しています。

ではいかにすべきなのか。

ユダヤ教・反シオニストたちは、イスラエル国を一つのあるまじき誤謬とみなします。そして、唯一可能な解決は、ユダヤ、アラブ現地住民の双方の意志に反して、つまり神の意志に反して獲得された国家主権を放棄し、以後、ユダヤの名のもとに政治行動を一切しないことであると考えるのです。イスラエル国の存在そのものが神への冒涜であり、ユダヤの民にとっての最大の危険要因である以上、それを廃棄にいたらしめるのは当然のことと彼らの目には映っているのです。(p.229)

文章は平易ではありませんし(特に最初の3章は何を言っているのか掴みづらい)、見慣れない熟語が出てきて読みづらい印象を持ちましたが、4章からは、言いたいことがはっきりしてきて、引き込まれるように読めました。

イスラエル国を成り立たせているシオニズムの性格と、それに対するユダヤ教徒の視点を知るのに、大変勉強になる一冊です。

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【書籍レビュー】メイヤ・レヴィン著「イスラエル建国物語」(ミルトス)

ドレフュス事件、ヘルツェル、バルフォア宣言・・・といった、イスラエル建国の過程はもちろん出てきますが、単に歴史を綴ったものではありません。

本書はタイトル通り、イスラエル建国にまつわる、個々のユダヤ人たちの具体的な、それでいて壮大な物語です。

読みながらずっと、NHKの大河ドラマを観ているような印象を持っていました。

そうです、これはノンフィクションの人間のドラマなのです。

ユダヤ人という独自のアイデンティティをもつ人々が、如何にしてパレスチナを祖国と熱望するようになり、そして如何にしてその奇跡的な偉業を成し遂げたのか。

本書を書いたメイヤ・レヴィンはユダヤ人です。

それだけに、良くも悪くも(と言うと軽く聞こえますが)、美しく、感動的で、崇高でさえあります。

世界各地からのパレスチナへの逃避行。
武器の調達の困難。
荒地を開墾する喜び。
キブツでの共同生活。

歴史は人によって作られるのだと改めて感じさせてくれます。

もちろん、パレスチナ問題のもう一方の当事者、パレスチナ人にとっては到底受け入れられる話ではないでしょう。

しかしユダヤ人にとっては、建国は再興であり、2000年来の悲願であり、文字通り血と汗で勝ち取った祖国でした。負けたらユダヤ人は滅びる。だからそれを脅かす存在を徹底的に叩こうとするのは、無理からぬことなのかも知れません。

本書は厚い志を持った人たちの夢とその実現を当事者視点で描いている点で、他にはない魅力を持つ中東本であると思います。


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【書籍レビュー】宮田律著「激変!中東情勢丸わかり」(朝日新書)

日本の原油輸入先は、中東諸国が実に89.5%を占めます(2009年石油連盟統計資料)。中東の情勢は、日本人の日常生活と直結していると言えます。
 
本書は、そんな現在の中東情勢を理解するための取っ掛かりとなる本です。
 
 
中東の不安定要因は大きくイスラエル・パレスチナ問題、イスラム教の宗派関対立、そして原油絡みがありますが、本書は後者二つ中心とした解説書です。
 
去年2011年に出た本なので、今年エジプトでイスラム政権ができたことや、今のシリア内戦のことは直接は載っていません。しかしエジプトで長らく続いていた独裁や、シリアのアサド政権の背景など、今の中東の有り様の意味するところがわかります。さらに日本と中東の関係のあるべき姿、中国の戦略などについて理解することができます。
 
いろいろな国の事情が脈絡なく出てくる(ように見える)ので混乱しそうになりますが、同じようなことを何度か繰り返しながら説明しているので、国ごとに整理しながら読むと良いでしょう。
 
よく中東の情報源として出てくる「アル・ジャジーラ」(本書では「アル・ジャズィーラ」と表記)の成り立ち、またカリスマ指導者がいなくても革命を可能にした中東諸国の携帯・ネット事情も大変興味深いです。
 

目次

序章 中東に翻弄される日本
第1章 中東社会の地殻大変動
第2章 王政がドミノ崩壊を起こす
第3章 イスラム原理主義を超えたネット主義
第4章 イラン vs イスラエル・アメリカ
第5章 日本と中国、存在感の差
終章 中東よ、どこへ行く

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【書籍レビュー】森博嗣著「喜嶋先生の静かな世界」(講談社)

森博嗣のファンを標榜する知人が、「これはぜひ読みたいんですよ。いいらしいんで。」と言っていたのが本書です。なぜすぐに読まないのかと尋ねたら、文庫化されるのを待っているということでした。

私も何気なしにネットでレビューを見てみたのですが、確かに満点がついています。つい興味が湧いて買ってしまいました。

主人公は、大学で研究者を志す若者です。

研究というのは、一般には決して派手な仕事ではないと思います。そんな研究者を主人公にした話がこれだけ高い評価を受けているというのは、どんな波乱に満ちたストーリーがあるのかと期待しながら読み進めたのですが、いつまでたっても特に大きな事件が起こるわけでもありません。

一人の学生が研究者として成長していく様子が、実に淡々と描かれていくだけです。しかし不思議と次第に引き込まれていきました。

読後感は今まで味わったことがないものでした。

研究への思い、そして主人公に強い影響を与えた「喜嶋先生」への思いが、まるで自分の経験のように心の深いところに収まってきます。

これは何だろうとよくよく考えてみると、自分の学生時代を綴ってくれているのだと思い当たりました。

つけ忘れていた自分の日記を見るような懐かしさと切なさ。私自身は研究者になったわけではありませんが、それでも大事な探し物を見つけたような感覚に囚われました。

中には登場人物たちが「喜嶋語録」と呼んでいる印象的な言葉が出てきますが、私のお気に入りは主人公と喜嶋先生のこんなやり取りです。

「この問題が解決したら、どうなるんですか?」
「もう少し難しい問題が把握できる」

研究社がこの本を読むと、学部での覚束ない卒業研究や大学院生活から、突然目の前が開く瞬間までもがリアルに蘇ってくるのではないかと思います。そして、喜嶋先生を「懐かしく」思えることでしょう。

ちなみに冒頭の知人は、私に先を越されたので慌てて電子書籍を購入して読んだそうです。 先に読んでゴメン。

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【書籍レビュー】「サダト自伝 -エジプトの夜明けを」朝日新聞社

S.コヴィーの名著「7つの習慣」の中で勧められていたのがきっかけで読んだのが本書です。

■一瞬の希望を投げかけた

平和という言葉とはよほど縁遠いと思われる中東地域で、一瞬、和平実現の希望が芽生えたことが歴史上ありました。1978年のイスラエルとエジプトの和平(キャンプ・デービッド合意)です。

度重なる中東戦争で激しく衝突してきたこの2国が和平に至った背景には、様々な外交努力もあったでしょうが、このエジプトのサダト大統領の類稀なる自主独立の意志と決断力があったからこそと、この本を読んで思いました。

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photo credit: Government Press Office (GPO) via photopin cc


■サダトとは

サダトはエジプト革命の中心人物であり、常に政権の中枢にいて、イスラエル国会に乗り込んで中東和平を呼びかけました。

大統領という座にあった最中に書かれた自伝ですから、自己正当化が全くないとは思えませんが、私利私欲からではなく、愛国心と信念を持って国を動かしていたということがはっきりと読み取れます。

この人は「7つの習慣」で言うところの「主体性を発揮する」人であり、環境に左右されない確固とした自己を確立していた人です。

また「目的をもって始める」人であり、行動を起こす理由を明確に知っていた人です。

そしてイスラエルとアラブの関係では「win-winを考え」両者が並び立つ方法を提案した人です。

彼の前の大統領ナセルの生き様を反面教師にしていたことや、日本の戦後復興からしっかり教訓を得ていたことも知りました。

和平反対論者によって暗殺されたサダト。もっと生きていたら、世界はずいぶん変わっていたかも知れません。


(古い本なので、恐らくAmazonでも希少でしょう。私は図書館で借りました)

■ 抄録

・エジプト解放への願い
「私の意思は私だけのものだ。この私は、自己の主人公なのだ!」 p.59

・脱け出せない二つの場所
「この世の中で、人間が自分から脱け出せない二つの場所がある。戦場と拘置所である。」 p.94

・心の自由を得る
「第54房の中で、私に物質的な必要が次第に減るにつれて...私の心は自由になり、いわば世俗的な荷を海の中に投げ捨てて大空に舞い上がり、存在のはるか彼方の領域、無限の領域に向けて鳥のように飛び立った。」 p.107

・政治とは
「政治とは、神の意思が具現化される社会を打ち立てる術だ、と私は思う。」 p.112

・大統領の良いことをする力
「大統領になったいま、私はよいことをするために使わなければならない巨大な、本当の力を私が持っているのだと感じた。」 p.243

・政治信念
「私は一国の運命にかかわるようなものごとを、一人の人間が自分の感情のおもむくままに処理すべきではないと信じている。」 p.249

・真実が究極的には勝つ
「(スエズ運河を再開するとの決意は)私が神経をいらだたせてくだした決定でもなければ、何かに対する反動でもなかった。それは、自信と、真実が究極的には勝つという確信に基づいて決めたことだった。」 p.349

・われわれの意思はわれわれ自身のもの
「エジプトは非同盟国の一員であり、今後ともそうあり続けるだろう。われわれの意思は、われわれ自身のものであり、われわれだけのものである。」 p.352

・進歩する人
「自分の考え方そのものを変えられない人間は、決して現実を変えることはできないのであり、その結果、少しの進歩もわがものとすることはできないだろう。」 p.358

・自分の幸福は
「なんぴとも他人の悲惨という犠牲の上に、自分の幸福を築くことはできない。」 p.377
アンワル・アッ・サダト (Wikipedia)

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photo credit: Kodak Agfa via photopin cc

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【書籍レビュー】竹内薫著「理系バカと文系バカ」(PHP新書)

自分の好きな世界に没頭しすぎて、極端な行動に走りやすい「理系バカ」。

他人の情報を鵜呑みにして、その場の空気に流されやすい「文系バカ」。

私が言ってるのではなく、この本にそう書いてあるのです。

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photo credit: woodleywonderworks via photopin cc

理系バカの事例

「解らないことは、何でもネットで調べる」。飲み屋で何かが話題になるとすぐにネットで検索して答える。

文系バカの事例

「血液型診断が気になる」。科学的な根拠がないのに振り回される。

どちらも心当たりがある私はどっち系なのか悩みます。

「文系、理系という垣根をとっぱらった、バランスのとれた知性のあり方を考える」という本書ですが、日本は理系人間が育ちにくいのか、理系センスがあるとはどういうことかと、どちらかと言うと理系優位の内容です。

著者は東大物理出身のサイエンスライターなのでそこは仕方ないでしょう。

とは言え、どっち系の人でも読んで面白いと思います。

以下、本書より抜粋。

■比喩の重要性

「文系作品を読んでいると、比喩がすごく重要なことが分かる。これは文系の世界だ。一方、計算や実験に比喩は必要ない。理系の世界に比喩はないのだ。もともと比喩表現は、相手に分かりやすく説明する時に使うものだ。」

■文系、理系にとっての失敗とは

「100件訪問して1件しか契約が取れない営業マンは、営業マンに向いていないと会社から判断されてしまうだろう。しかし、理系の世界では99回の失敗は1回の成功を編み出すためのデータと成り、それだけの数を失敗しても排除されることはない。」

■理系センス

「理系センスとは論理的に考えることであり、仮説を立てて検証すること」

■理系の世界と文系の世界

「科学の世界の論理や仮説検証が宇宙に備わっている法則がもとになっていて変わることがない自然が基準なのに対して、法学の世界の論理や仮説検証は人間社会の法律すなわち変わり続ける「取り決め」が基準。」

■理系バカ、文系バカに陥らないための5か条

1.聞き上手になる。コミュニケーション能力を磨く。

2.文系なのに科学書漬けになってみる。食わず嫌いをしない。

3.理系なのにフィクションを楽しむ。小説が一番いい。

4.どんな情報もまずは疑ってかかる。物事の裏側を読むこと。

5.気になったものは人に話してみる。興味を持たせ、より詳しく面白く。自分も腑に落ちると自分のものになる。

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【書籍レビュー】山井教雄著「まんが パレスチナ問題」

今なお解決の兆しの見えないパレスチナ問題を、手っ取り早く知るのにオススメなのが本書。

純粋な意味でのマンガではなく、イラスト入りでパレスチナ・イスラエル問題を解説した本です。

ユダヤ人のニッシムとパレスチナ人のアリという2人の少年と1匹のねこが、代わる代わる説明してくれます(少年たちはタンタンに似ています)。

今までで読んだパレスチナ関係の本の中で一番分かりやすいかも。(それとも学習効果?)

前半は3大宗教の祖アブラハムからキリスト時代、その後のユダヤ人の離散と迫害の歴史、イスラエル建国前夜まで。

後半は建国から中東戦争、和平への歩み、ヨルダン川西岸の壁建設まで。

平易な文章で一気通貫で読むことができるだけに、敵味方が目まぐるしく入れ替わる変化の早さが実感できます。

著者はあとがきで、「民族」や「民族意識」が「人工的」なものだとして、「人類のガン」と呼び、「反民族主義」を打ち出しています。

最後にニッシムとアリの関係に一捻り加えることで、民族とは何か、民族の名の元に争う意味はあるのかと考えさせようとしています。

パレスチナにネルソン・マンデラは出るのでしょうか。


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【書籍レビュー】マッテオ・モッテルリーニ著「経済は感情で動く」

マクドナルドで「期間限定でコーヒー無料」なんて言われると、行かなくちゃ損みたいな気分になってつい行ってしまう。

そんなあなた(←私)のための易しく楽しい行動経済学入門です。

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会社の同僚が面白いというので買ってみたのですが、帯には「いちばん読まれている行動経済学の本」とありました。


・2万円もするオペラのチケットをなくした。チケットを買い直しますか?
・劇場に来てチケットを買おうとしたら、ポケットに入れた2万円が見当たらない。チケットを買いますか?

前者ではNo、後者ではYesという回答が多いそうです。

同じ金額のお金が、同じ価値を持つとは限らないことを、多くの設問を通して示してくれます。

・真ん中を選ぶ法則
お寿司で特上、上、中とあると上を選ぶ人が最も多い。4000円と5000円の品物で5000円の方を売りたければ、あえて6000円も揃えるとよい。

・コンコルドの誤謬
コンコルドの開発には多くの額を投資したのだから、途中で採算割れ見込みになっても開発をやめられない。過去の投資が将来の投資を左右する。

・・・など、ビジネス雑誌でよく取り上げられるような、おカネを巡る人の選択の不思議ネタが満載です。

帯の「本書の特徴」
1。クイズ形式で説く、最新の行動経済学と神経経済学のエッセンス
2。お金と経済に関わる<心の法則>のポイントを「コラム」と「教訓」で紹介
3。話題が豊富
4。さまざまな局面でのあなたのくせと、相手のだましのテクニックがわかる
5。考えるヒント、儲かるヒントがいっぱい

看板に偽りなし、面白い本でした。

行動経済学の本は他にもいろいろありますが、一冊読んでおくと、引っかかることが少なくなるかも知れません。(←マックの無料コーヒーを飲みながらこれを書く私・・・)

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【書籍レビュー】山本美香著「ぼくの村は戦場だった。」

普段から中東のニュースをウォッチしていますが、内戦のさなかにあるシリアでは連日のように10人、100人単位で人々が犠牲になっています。

そんな8月20日、ジャーナリストの山本美香さんが北部アレッポでの取材中に銃撃を受け、死亡しました。

山本さんの著書があることを知り、購入して読んでみました。

アフガニスタン、ウガンダ、チェチェン、コソボ、イラク。

正直、読み進めるのが辛い本でした。

これが本当に現実なのか。

そしてこのような戦場を取材した山本さんへの問いかけ。

私と同じ年のこの人は、紛争地域の取材を続けました。

なぜ?

戦場で多くのジャーナリストが死亡していることを十分承知の上で、なぜ?

破壊された建物。

拷問を受けた女性。

怯えて暮らす老婆。

およそ子供らしくない表情の子供。

「誰がこんなひどいことをした。もうたくさん、耐えられない」息子を失った母親

「戦争は、どちら側が正当かわたしには分からない。でも、ひとつだけ分かっていることがあるわ。私たちが犠牲者だってことよ」老婆

「私たちにはすばらしい人生があったのに。もっと悪くなるのではと心配でならない。私の家はもうないの」家を失った女性

「誰も悲しみの意味を知らない。誰も本当の悲しみを知らない。悲しいと言っても本当の意味などわかっていない。でも今、私は悲しみを知る・・・」詩?

目をそらしても現実が変わるわけではない。
そうであるなら、目を凝らして、耳を澄ませば、
今まで見えなかったこと、聞こえなかったことに気づくだろう。
戦場で何が起きているかを伝えることで、時間はかかるかもしれないが、
いつの日か、何かが変わるかもしれない。
そう信じて紛争地を歩いている。(「はじめに」より)

取材して、生きて帰って、報道することで、自分の仕事は完結するのだ。しかし、どんなに気をつけていても、戦場は戦場。身の縮む思いばかりだ。(本文より)

屋根のある家に住んでいる。
空爆される恐怖はない。
道を歩いても、銃撃の心配はしなくていい。
道から逸れても、地雷の心配をしなくていい。
スーパーに行けば、食べ物は買える。
朝起きれば、家族がおはようと言う。
少し熱でもあれば、病院に行って薬がもらえる。

こんな自分に何ができるのだろう。
わからない。
何をしたらよいのか、わからない。
でも、山本さんのような人が私たちの代わりに目となって、耳となって、伝えてくれている。

つらいけれど、受け止める以外に思いつかない。
そしてこの事実を次に伝えること以外に思いつかない。

せめて、今現在も戦場で怯えて暮らす人々がいることを思いながら、過ごしたい。

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【書籍レビュー】S.コヴィー著「7つの習慣」キングベアー出版


最新号の「PRESIDENT」誌で、著者のS.コヴィー氏が7月17日に亡くなったことを知りました。追悼記事でワタミの渡邉美樹氏が本書を「親友のような感覚」と述べていますが、私も同感です。「7つの習慣」は、いつも傍に置いて読み返したい本の一つです。

とにかくエピソードが豊富で面白いです。仕事のことも出て来ますが、特に家庭生活での妻や子供たちとのやり取りを通じたエピソードは、同じく家庭を持つ身として大変興味深く、教えられる所が多々あります。

本書で挙げられている7つの習慣は相互に関連していますが、これを習慣化するのは決して易しいことではないと思います。人間、そんなに簡単には変われません。しかし、これらが「習慣」であることで、二つの意味で希望を持つことができます。一つには後天的な「習慣」であって先天的な「才能」ではないという希望です。自分はとてもそんな人間にはなれないと諦めるのではなく、日常の小さな場面での反復学習によって、次第に習慣化できるということです。もう一つには「習慣」であって「方法」ではないという希望です。すなわち付け焼き刃のハウツーものではなく、一旦自分のものにしたならば継続的に繰り返し行われ、その人の性質として体得されている状態になれることです。

情けないほど歩みの遅い自分ですが、だからこそ折々に繰り返し読みたくなるのです。

以下に内容を箇条書きに載せておきますが、これらの一つ一つが豊富なエピソードに支えられています。この豊かな人間愛と深い洞察に満ちた本書をぜひ手にとってみて下さい。


内容箇条書き

■第一の習慣:主体性を発揮する

・自分から進んで状況を改善する行動を起こすようにする。
・価値観に基づいて行動し、現実を正しく認識し、その中で他人の気持ちや周りの状況を理解する。
・他人の弱点や欠点を批判する目ではなく、慈しみ深い目で見てほしい。彼らが何をしているか、何を怒っているかが問題ではなく、それに対してあなたがどういう反応を選択するか、あなたは何をすべきかが問題なのだ。

■第二の習慣:目的を持って始める

・人生最後の姿を描く。
・自己リーダーシップ。自分の望む結果を定義する。
・正しい原則を自分の生活の中心におく。
・個人的なミッション・ステートメントを書く。
・脳全体、特に右脳を活用する。イメージトレーニングをする。

■第三の習慣:重要事項を優先する

・原則中心の生活を具体的に実行するために管理、マネジメントする。
・右脳でリードし、左脳で管理する。
・「緊急でなく重要な領域(第二領域)」に集中する。これは効果的な自己管理の目的である。大きな結果を出す人は、問題ではなく機会に集中する。
・第二領域の活動を行う時間は第三、第四領域からしかとれない。一見重要に見える緊急な活動にノーを言うこと。
・第二領域に集中した一週間の計画をする。役割定義→目標設定→スケジュール化→日々の対応
・効果的なデレゲーション(他の人に仕事を任せること)を行う。初期投資は必要。手段よりも結果に焦点を合わせる。望む結果→ガイドライン→使える資源→責任に対する報告→履行不履行の評価

■習慣の比喩

第一の習慣:あなたはプログラマーだ
第二の習慣:プログラムを書く
第三の習慣:プログラム通りに生きる

■信頼残高

礼儀正しい行動を、親切、正直、約束を守るなどにより信頼残高を作る。最も日常的で身近な関係においては、継続的な信頼残高の預け入れをしなければならない。継続的な期待があるところには、古い預け入れの効果は消え失せるから。難しい問題について話し合うには、高い信頼残高が必要。
信頼残高を増やす方法
・相手にとって大切なことを、あなたも大切に思う必要がある。
・小さな心遣いと礼儀を大切にする。
・約束を守る。
・期待を明確にする。
・誠実さを示す。すべての人に対して平等に同じ原則にたって接すること。
・引き出しをしてしまったら誠意をもって謝る。

■高潔な人格

大衆の救いのために勤勉に働くより、ひとりの人のために全身を捧げるほうが気高いのである。ー ダグ・ハマーショルド元国連事務総長

■第四の習慣:Win~Winを考える

・当初それぞれの当事者が持っていた案ではなく、全く新しい第三案の存在相手や自分の考えに限定されない、より良い方法があるはずだと確信すること。
・双方が納得できる案を見つけられないときは、合意しないことに合意する(No Deal)。

Win~Winを支える5つの柱
1.人格。勇気、思いやり、豊かさマインド。
2.関係。双方が互いに高い信頼残高を持っている。
3.合意。お互いの関係を育てた上で合意を作り出す。
4.システム。組織内では成果を評価するために規定する。
5.プロセス。問題を相手の立場から見る→対処しなければならない課題を明確にする→完全に納得できる解決のために確保すべき結果を明確にする→その結果を達成するための案や選択肢を打ち出す

■第五の習慣:理解してから理解される

・まず相手の話を聞き、それから診断し、処方する。
・自分の過去の経験に基づいて自叙伝的に話を聞くことはすべきでない。
・相手のパラダイムや不安、関心事に対する正しい理解を踏まえて、自分の考えを、明確に具体的に伝える。
・うるさく迫らない。
・たいていの場合、本当に心の中を打ち明けることができさえすれば、自分の問題を自分なりに整理し、その過程で解決策も明確になってくる。
・理解のための4段階
1.話の中身を繰り返す。
2.話の中身を自分の言葉に置き換える。
3.右脳を活用して相手の感情を反映する。
4.内容を自分の言葉で言い、同時に感情を反映する。

■第六の習慣:相乗効果を発揮する

・相乗効果とは、全体の合計が各部分の和よりも大きくなること。
・相乗効果の本質は、相違点に価値を置き、それを尊重し、強みを伸ばし、弱さを補完すること。
・同一と一致は違う。本当の一致とは相互補完することだ。
・違う意見を持ちながら両方とも正しいということは、論理的なことではなく、心理的なものである。
・相乗効果は実際に機能する、正しい原則であり、これまでのすべての習慣の最たる目的である。
・「よかった。あなたは違う意見を持っている。」

■第七の習慣:刃を研ぐ

・あなたの持つ自分自身という最も大切な資源を維持すること、つまり自分の中にある自然から授かった四つの側面〈肉体的側面、精神的側面、知的側面、社会・情緒的側面〉のそれぞれを再新再生させること。
・刃を研ぐことは第二領域の活動であり、自ら率先して行わない限りは実行できないものである。
・自分自身に投資すること。
・定期的に優れた本を読むこと以上に、自分の精神を高め、養う方法はない。

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