作品

【作品】 facebookの未来

N氏は自分のiPadをONにし、facebookを立ち上げた。facebookの登録者数はすでに世界人口の1/3を超えている。facebookなしの生活など、もはや考えられない。

画面にはN氏のタイムラインが表示されている。N氏は上段の「あなたの情報」をタップし、最新の閲覧状況を表示した。

「昨日のあなたのfacebook:

        申請した友達:88人(前日比ー167人)
              うち承認済み:86人、承認待ち:1人、保留:1人」

申請した友達が大きく減っているのは一昨日に異業種交流会があったせいで、数字自体は平日並みだ。承認待ちのKはN氏の中学の同級生で、facebookを始めたばかりのようだから、まだセットアップが済んでいないのだろう。保留のHは、昨日あまりいい返事をもらえなかった顧客だ。
もっとも、N氏はもらった名刺を見ながらいちいち検索して友達申請している訳ではない。N氏はfacebookアプリ「SmartRequest」を使っている。名刺をスキャンしたデータを元に、自動的に友達申請してくれる。このアプリのおかげで、N氏は名刺交換した人に友達申請しないという失礼を避けることができるのだ。

N氏は画面の下方に目をやった。

    「友達申請:294人(前日比+8人)
        うち承認:59人、非承認:235人」

受信する友達申請は毎日少しずつ増えていて、N氏は顔も思い出せない人がほとんどだ。しかしN氏が薄れかけた記憶の糸を懸命に辿る必要はない。facebookアプリ「iFoundMyFriend」がN氏の個人データや、facebookが公開している迷惑アカウントリストと照合して自動的に承認・非承認を行ってくれる。これで、昔の同級生を思い出せなくて承認しそびれるという失礼も防げるのだ。

N氏は画面を少し上にスワイプした。

「あなたの投稿:243件」

N氏の職種、年齢としては平均的な数字だ。もっとも、こんな数の投稿を自分の手でやっていては仕事にならない。N氏はfacebookアプリ「LifeTimeline」を使っている。腕時計に内蔵されたカメラとバイタルセンサーが周囲の状況を把握し、生体情報から喜びや興奮といった感情を分析し、適切な内容とタイミングで自動投稿してくれるのだ。

N氏はその下の数字を見た。

「 付与したコメント:18,142件(前日比+1,381件)
     付与したいいね!:385,256件(前日比+893件)」
   
N氏はfacebookアプリ「iAppropriate」を使っている。ニュースフィードに現れる友達の投稿の写真や文章を分析し、自動でいいね!やコメントをつけてくれる画期的なアプリだ。これで多数の友達からの膨大な数のフィードを読む時間をほぼゼロにできる。これなくして友達と仕事を両立することは、N氏にとっては難しいだろう。

N氏は末尾の、一番重要な数字を確認した。

   「付与されたコメント:973,254件(前日比+2,385件)
       付与されたいいね!:217,482,431件(前日比+5,653件) 」

N氏はそれを見ると満足げにiPadをOFFにした。友達のコメントを読むことはまずない。そんなことできるわけがないし、する必要もない。どうせみんな、同じfacebookアプリを使っているのだから。


(c)neriman

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